2021年3月23日 公演評「身体詩公演ー花吐きーhanatsuki」

評:田野倉 康一(詩人)



アトリエ第Q藝術にてプロジェクトなづきの『花吐き』を見ました。

コロナ以降初の劇場解禁です。川津望の舞台作りが詩そのものであることにあらためて感動しました。方波見さんの音楽、音は確実にあの世とこの世を往還し、その入り口の双方を司っています。

やましんさんの、やましんさん以外には絶対できない存在の仕方は、登場人物のなかでただひとり、生身の人間であることと見事にシンクロしていました。そして貝ヶ石奈美のダンスと月読彦さんの言葉、表情、所作! ダンスと演劇の身体の使い方の違いを露にしながら、そのことによって他界に住む者と、あの世とこの世を跨いで生きる(死んでいる)者とが見事に語り尽くされていました。

それにしても奈美さんの、身体による空間の変容力は、女性の身体のエロスと言うより人間の身体のエロスを体現して時に宇宙的ですらあります。前にも語りましたが、若い頃、たまたま大野一雄がプライベートな場所で即興を踊った時の驚きがよみがえりました。ちょっと迷いましたが、劇場を自分に解禁して良かった。やっぱり小劇場の空間が好きなんだなあ、と実感しました。

やましんさんには挨拶しそびれてしまいましたが、みなさん、本当にありがとうございましたー! 

あ、それから川津望さんにもうひと言、この舞台を可能にしたのは君の、君にしかできない、君の詩そのものなのだよ! だからいろいろ大変なことが襲ってきても、絶対詩だけは手放さないでね。