帰りたかった。帰りたかった。帰りたかったーー。

こころの奥に閉じ込めていた或る秘密を打ち明けに来た男。そんな男を罵る男。「あの子」の記憶を共有するふたりが電車に乗り、向かう先は……。

川津望第1詩集『ミュート・ディスタンス』(七月堂)におさめられた詩篇を解体し、コラージュの手法を用い再構築した朗読による悲喜劇。
失われた「あの子」を舞い、「あの子」の声をふるわせるのはコンテンポラリーダンサー貝ヶ石奈美。
楽師/コロスであり、共有された記憶を語る御使いのような役どころとして園 丁、山崎慎一郎。かけがえのないものを奪ってゆく象徴的な男は上野憲治。
そして主人公の分身、山田零。この朗読劇の双子である詩集の作者、川津望は自作詩の朗読とアクトで参加。主人公をつとめるのはヘブンアーティストの今井歴矢である。

ーー鏡という鏡 鏡、ミラー、ミラー、未来を写す。鏡をうつす。どこへ移そうか。

●お客様の感想ー1ー/ー2ー

写真:赤羽卓美

写真:赤羽 卓

日時:11月24日(土)〜25日(日)
場所:アートスペース.kiten

●出演
貝ヶ石奈美
山崎慎一郎
園 丁
上野憲治
川津望
今井歴矢
山田零

プロジェクトなづき共同主宰 川津望が詩集を刊行した。タイトルは『ミュート・ディスタンス』。
プロジェクトなづきではいわゆる「朗読会」という形をとらない。
楽師/コロス、ダンスとパフォーマンス、朗読者の身体がそれぞれ同じ舞台に着地することに重きを置き、詩集におさめられる詩篇を底流として、物語を展開する。
それが『液晶線』となる。

キャラクターガイド

男1(今井歴矢)
主人公であり、困っている男。社会的にそれなりの立場を持ち、精神の清浄さや霊性を唱える一方、妻子がありながら若い娘に懸想している。
大切なものを失い、途方にくれるさなか、そんな男を困ったヤツと罵り「どこにいこうか?この電車はどこまでもいけるのだよ」と言う男2(山田零)と液晶線に乗ることになるのだが……。

男2(山田零)
困った、という男に「おまえは困ったやつ」なのだと罵る男。ぐるぐるまわる液晶線に男1とともに乗りこむ。
どうやら男1(今井歴矢)と記憶を共有しているらしい。失ったどちらの「あの子」をおまえは選ぶのか?
液晶線内でおこったことがきっかけで更にあるものを失ってゆく男に、執拗に詰めよる彼の真意とは?

男3(園 丁)、男4(やましん)
液晶線の世界の御使いのような存在。すべてを把握するコロスたち。音楽とことばによって世界を奏で、詩人の詩語から男1(今井歴矢)の欲望を炙り出して行く。

男5(上野憲治)
液晶線に乗りこんできた不思議な男。ぐるぐるまわる液晶線内で彼にぶつかられると、何かをすられるようだ。

ナミ/しんだ娘(貝ヶ石奈美)
うしなわれた「あの子」であり、男1(今井歴矢)と禁じられた関係にある女性。「あの子」たちはどこか似ているようだ。
困っている男は血の繋がりを取るのか、欲望を取るのか、それともーー。「あの子」の願いとは、なんだったのか。

詩人/しんだ娘(川津望)
その光景を観た者。書く者。