淡雪になるまえ、雨粒ひとつぶひとつぶは時計なんです。

それがてんですきに時をすすめるものだから、よるもひるも色んな方向にねじれてゆきます……
どんな世界や名前だって引きちぎられそうになりながら、持ちこたえている、丁度ぼくみたいにそんなフリを必死でしている。
だから舌打ちしているんです。
ぼくも時計だから舌を歯の前やうしろでチッチと鳴らしてみるんだけれど、やっぱりおじいちゃんの時刻は鳴らせない。
おじいちゃんも雨粒でした。ぼくははだいじなだいじな一滴をうしないました。

『なづき』公演評(評:北里義之)


写真:大杉謙治

日時:<公演>8月24日(金)〜26日(日)/<後夜祭>8月27日
場所:アートスペース.kiten

●出演
アルチュール佐藤
園 丁
今井歴矢
貝ヶ石奈美
川津 望
田口 和
武智博美
武智圭佑
月読彦
秦真紀子
山崎慎一郎
山田零
米倉香織

●フライヤー原画/衣装テキスタイル
犬飼美也妃


「なづき」。ダンサーであり、これまで演劇に深く携わっていた月読彦と詩の書き手川津望によって設立された「プロジェクトなづき」による第一公演である。
プロジェクトなづきでやる公演は音楽家、役者、舞踏家、ダンサー、詩人、美術家、パフォーマー、デザイナー等が関わり、かたちづくる。
その公演の脚本を担当する者が、習作公演と呼ばれる本公演の素材と本公演の関係を思考し、アウトプットする。
旗揚げ公演「なづき」は、或る厳密なルールに基づく「なづきⅠ〜Ⅱ」、
幻想造形師kaoによるキャトランドーレの世界「なづきⅢ(キャトラン・ドーレ)」、
「なづきⅠ〜Ⅱ」の世界を踏まえながら作曲と演奏パフォーマンスに特化した「なづき 天幕の中の会話」、
演劇作品「なづき 三千世界横丁の犯罪」、そして本公演のフライヤー制作を公開した「なづきドローイング」
……これらの世界観を担いつつ、作曲家による現代音楽の初演が聴かれるなど更に要素が加わる。
本公演の後夜祭では、公演「なづき」の世界観を反映した公演期間中のみ販売する服飾ブランド「プロダクト なづき」が初お目見え。


金曜日はソワレ、土日に関してはマチネ公演がある。
これは演劇か、パフォーマンスか、またリサイタルなのか、服のコレクションなのか、人によって「なづきの読み方」はさまざまであろう。
多層の物語がどのように絡みつき、なづき【脳】をめぐり、名付けられてゆくのか。目撃されよ。
習作の果てに到来する、なづき