余命宣告された孤独な男。
自暴自棄になり、あてどもなくさまよう。そこで出会った訳ありの女は水が飲みたいということばをくりかえす……。
《ミュート・ディスタンス》《極夜ーPolar nightー》と共演を重ねてきた山崎慎一郎と貝ヶ石奈美。トリックスターとして月読彦、楽師では方波見智子、川津望、米倉香織が再び参加。
照明は早川誠司。
エロティシズムと生と死が織りなす狂おしい三篇目の身体詩。

身体詩公演 ー花吐きーhanatsuki

あいつが帰ってきただと
酒を呑ませて眠らせろ
身のうちに非常口を
戸外にはおおきな穴がひらき
祖父だったものが
毛並みをしめらせる
こどもは頭を撫でられるもの
あなたに触れると爛れた顔がみえる
無人の家族
寝静まったひとびとは患部
待ち合わせることなく男と会う
前提を口にすれば
頭蓋も歯もゆびさきも
液体を流しこまれたように
目の前のコップだ
記憶は思い思いに席を離れてゆく
ようやくベッドで真上を向く
映写機はまわらない
数々のちがう名まえで呼ばれ
三井ガーデンホテル汐留イタリア街
花は枯れた花に
身を供えて咲く
ーー実は検査で突然
時間がないことを告知されましてね
次があるならば
帰り 電車に乗りましょう
うつむいて眠るあなたを
みつめるだけの芝居だ
あけがた
知りもしない
男の家が
からだになり
わたしは陽に焼ける
鳥が哭く
嘴から生まれようとしている
木洩れ日に傷みながら
男と血を流していたい


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-花吐き- hanatsuki
●日時:2021年3月23日(火)  open 19:00/start 19:30

●場所:アトリエ第Q藝術  >>会場地図

●出演貝ヶ石奈美山崎慎一郎月読彦
●楽師方波見智子山崎慎一郎川津望米倉香織
●照明: 早川誠司(アトリエ第Q藝術)
●作・演出川津望