2011年、或る声から伝えられた内容は男を強く突き動かした。

「ちょっとそこまで。そう、ちょっとそこまでなのさ。それから何年が経っただろう」

あの日、行方不明になったともだちを探す旅に出た。液晶線という電車に乗ってどこかに向かう。死者の里か生者の国か。
そこに着くために彼らは藪の図書館でたましいを借りてゆかないといけない。

ーー流態城市。破滅的な結論を導き出してしまった男、失踪者たちの行方。図書館の司書の正体、そして海の驕りと名指されるものとはーー。

「ひとりぼっちの幽霊をここで見たよ」
「覆われた懐かしい場所を目指すのではなく、あなたの中に隠れている移調されたわたしを聴け」

それぞれのことば、それぞれの身体、そしてそれぞれの音の強度が魅せる時間、プロジェクトなづき。


写真:烏賀陽弘道

●日時:2019年5月25日(土)・26日(日)

●場所:アトリエ第Q藝術 会場地図
●台本・演出
川津望月読彦

●舞台インスタレーション
今井蒼泉

●出演
<パフォーマンス>
今井歴矢上野憲治貝ヶ石奈美川津望
ゴーレム佐藤月読彦伸枝町田藻映子山田零
<楽師>
園 丁方波見智子山崎慎一郎米倉香織


フライヤー



当日パンフレット


キャラクターガイド

明螺/めいら(山田零)
失踪した友の困通(こまつ)を追い旅に出た男。液晶線という電車に乗り、たましいの所蔵されている藪の図書館に辿り着く。「流態城市へおゆきなさい」司書に告げられ、本棚で目覚めたみちあふちを借りる。明螺が知る真実とは。

困通/こまつ(今井歴矢)
天才科学者。津波やその余波により愛娘の囚子(しゅうこ)をうしなう。「あなた、AIですか」という謎の電話に「わたしは愛」と答え明螺(めいら)の前から姿を消す。流態城市の帝王、鈴本目次の実験に加担しているが……。

鈴本目次(ゴーレム佐藤)
祖父からの物語を受け継ぐ流態城市の帝王。「432の神秘」を提唱し、世界を432で覆おうとしている。
誘波と共に研究機関なづきに天才の脳をストックすることで、たましいを監視している。困通(こまつ)を「アイ」と呼ぶ彼の真意とは……。

誘波/いざなみ(伸枝)
鈴本目次の有能な秘書。流態城市と藪の図書館を観察する者。
鈴本目次にお色気をふりまき「432の神秘」に賛同しているようにみえるが、困通(こまつ)を「アイ」と呼び、愛玩動物のように扱う面も持つ。
彼女には別の目的が……?

囚子/しゅうこ(町田藻映子)
困通(こまつ)の娘であり、震災のさまざまな影響により亡くなったが、流態城市のまわりを霊となりさまよう。
御使(みつかい)と会話をする。故郷へ帰りたかった、その思いが彼女を地に留まらせているのだろうか、それとも……。

司書(上野憲治)
たましいを所蔵する藪の図書館の司書。図書として大切にたましいを扱い、「虫ぼし」もかかさない。
司書と明螺(めいら)のはなしを聞き、起きた書物 みちあふちを連れて、明螺に流態城市へ行くように言う。
液晶線などで記憶をスる裏の顔を持つ。

みちあふち(川津望)
藪の図書館に所蔵されていたたましい。明螺(めいら)と司書が困通(こまつ)について話していた時に本棚で目覚めて以来、明螺の前にあらわれるようになる。
意思の疎通がとれる時ととれない時がある彼女の本当の目的とは……。

御使/みつかい(園丁)
見守る者。故郷と家族への思いを抱きさまよう囚子(しゅうこ)に幾度も語りかける。
その手ゆびは触れたものの中を巡る世界へアクセスでき、それをひもとくことができるという。
流態城市には御使が奏でた音、生成した音楽が飛翔している。

月読/つくよみ(月読彦)
困通(こまつ)を探しにゆこうとする明螺(めいら)に「死者の町へ行くんだね」と言う道化。
液晶線や流態城市、はたまた司書やみちあふちとまでことばを交わす彼だが……。

ナミ・ツナミ(貝ヶ石奈美)
困通(こまつ)と禁断の関係にあった女性。囚子(しゅうこ)と同じくらいの年齢であった。現在、ほんとうの彼女はどうなっているのだろうか。形をかえてたびたび困通の前にあらわれるが……。